研究実績の概要 |
近年、先天性心疾患(CHD)の診断および治療の進歩に伴い、複雑CHDにおける生存率も飛躍的に向上したが、一方で、成長と共に神経学的後遺症が高頻度に認めることが明らかになってきた。我々は、CHD児においては特異的な発達障害がみられ、同時に、これらの児では脳磁気共鳴画像(MRI)上、脳容積は正常に比べ減少しており、低酸素の持続と関連があることを報告した。本研究では、Ⅰ.CHD児の1歳、3歳、6歳での精神神経発達の追跡調査を行い、発達障害の特異性を調べ、Ⅱ.術後乳児早期から、MRI撮像で脳容積と拡散異方性を評価し、Ⅲ.MRI所見と周術期因子を含めた背景情報を解析し、精神神経発達の予後予測因子を明らかにすることを目的とする。特に、前頭前野の発達が著しい新生児・乳児早期の脳発達異常と、就学時に明らかになる学習障害などの高次脳機能障害との関連性を解明する。 CHD児に見られる精神発達や行動異常は、全体的な知能は保たれているのにもかかわらず、認知や注意欠陥/多動性,視覚と運動の統合,遂行機能,言語の遅れなど高次脳機能障害にかかわり、発達のプロフィールに偏りがある。しかも、これらの異常は、就学時に初めて明らかになることが多い。CHD児の精神運動発達の追跡調査を引き続き行っており、現在は、学童期の心理発達検査として、WISC-Ⅳを実施し、頭部MRI画像の撮像を行い、脳の機能的、器質的な病因を研究している。 頭部MRI画像解析においては、当教室に解析用のパソコン機器を導入し、よりよい画像解析方法を探求した。研究成果の一部を、2016年3月に行われた富山国際シンポジウムで平岩が発表した。その内容をもとに論文を作成中である。 また、乳幼児期の発達検査結果が、学童期のIQと学校での学習支援の有無にも相関があることがわかってきた。その内容を2016年7月の日本小児循環器学会で発表した。
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