研究実績の概要 |
すでに樹立済みの健常人由来iPS細胞(WT-iPS)、先天性好中球球減少症由来iPS細胞(SCN-iPS、変異部位ELANE C194X)、周期性好中球減少症由来iPS細胞(CyN-iPS、変異部位ELANE R191Q)をマウス由来AGM-3S feeder細胞と共培養し、VEGF添加にて造血系に分化誘導させ、FACS AriaにてCD34陽性細胞に純化した。その後CD34陽性細胞を各種サイトカイン(SCF、IL-3、G-CSF、FLAT3、FP6)を用いてコロニーアッセイ及び液体培養にて顆粒球分化誘導を行った。コロニーアッセイでは14日目に評価を行い、SCN-iPSにおいてWT-iPS, Cy-iPSと比較し明らかに顆粒球マクロファージコロニーおよび顆粒球コロニー数の減少を認め、これは患者骨髄CD34陽性細胞を用いて行った同実験と同等の結果であった。また液体培養で得られた顆粒球は、培養7日目に評価を行い、形態学的に核の分葉を認め好中球様であった。フローサイトメトリーによる表面抗原解析を行い、顆粒球抗原であるCD13, CD33, CD11bの発現を確認した。細胞内MPO染色でも陽性を確認した。SCN-iPSにおいてはWT-iPS, Cy-iPSと比較し、細胞数の増加が乏しかった。また培養7日目に施行した 形態学的所見において、WT-iPS, Cy-iPSでは成熟好中球を約半数以上に認めたが、SCN-iPSにおいては成熟好中球はわずかに認めるのみであり、死細胞を30%程度に認めた。培養10日目に行ったapoptosis assayにおいてはSCN-iPSではAnnexinV陽性細胞を約60%に認め、これはWT-iPS, Cy-iPSと比較し明らかに高値であった。SCN-iPS由来の好中球において細胞死の亢進を認め、これらは患者骨髄で認められた所見と同等であり、実証モデルとして使用可能であることを証明した。
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