研究実績の概要 |
LED(light emitting diode)は、安価で耐久性に優れ、波長や強度の設定が容易である特徴を有し、臨床応用が期待される。我々はこれまでにLED光単独で癌細胞制御が可能となり得ることを報告している(Anticancer Res. 2014)。しかしながら、波長や強度による種々の細胞株に与える効果に関して報告ごとに実験条件にばらつきがあり、依然不明な点が多いことが課題であった。本研究ではLED光の細胞障害、細胞保護に関与する至適条件の検索や癌腫特異性を検討するとともに、その分子メカニズムを解明することを目的とした。まず癌腫特異性の検討では465nmLED光は大腸癌細胞の増殖をエネルギー依存的に抑制(p<0.05)し、AnnexinV/PI染色でアポトーシス細胞の増加を認め、またFAS・Caspase3・Caspase8 mRNAの発現上昇(p<0.05)を認め、アポトーシス経路の活性化が示唆された。一方で膵癌細胞に対しては、同様に細胞増殖抑制効果を認めた(p<0.05)が、Caspase3発現に変化を認めず、CCND1 mRNA発現の低下を認めた(p<0.001)。細胞周期の検討ではG2/M期の細胞数減少を認め、細胞周期の停止が示唆され、癌腫による異なるメカニズムによる抗癌作用を認めた。また大腸癌細胞株においては465nmLED光と5-FUの併用で細胞増殖抑制の相乗効果を認め、さらにLED光の作用メカニズムとして光受容体として知られるオプシン3(opn3)に着目したところ、細胞増殖抑制に伴ってopn3発現の低下を認めた。細胞保護効果について我々はこれまでに小腸細胞、線維芽細胞での検討を行ってきたが、今回、マウス肝より初回分離培養した肝細胞での検討を行い、635nmLED光によるpERK, CCND1発現の増加と、Caspase3発現の低下を認め、肝細胞に対する細胞保護効果が示唆された。また、小腸細胞に5-FU投与した障害モデルにおいても検討を行ったが、525nm,625nm光による細胞保護効果は認めなかった。
|