研究成果の概要 |
全身麻酔を用いた手術後には睡眠覚醒リズム障害などが生じる. これは, 視床下部で概日リズムを作っている遺伝子Per2の発現量が麻酔により変化するためであると考えられる. このPer2発現変化の機構を明らかにすることを研究目的とした. 本研究により, 全身麻酔薬セボフルランによるPer2発現変動は, 抑制性の神経伝達物質GABAによるシグナル伝達が関わっていることを明らかにした. また, より安定した実験手法を確立するため, Per2発現に応じたルシフェラーゼレポーターをもつ視床下部由来不死化細胞株の樹立・細胞株を用いた観測系を作り, 今後の生化学的解析に向けた基盤づくりを行った.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
手術後に見られるリズム障害・せん妄等はICU症候群・集中治療後症候群と呼ばれ, 術後の予後に重要である. ICU症候群は多種の原因による複合的な症状であるが、睡眠覚醒リズム障害に関しては麻酔の副作用が原因のひとつとして挙げられる. 麻酔がリズム障害の原因となる機序は明らかではなかったが, 本研究により, 視床下部の視交叉上核における時計遺伝子の発現がGABA性の神経シグナル伝達を介して抑制されていることが明らかとなり, ICU症候群予防法の樹立につながることが期待される. また, 気相分子が神経細胞に及ぼす影響を観測するための系を作ったことにより, 将来的な基礎研究につながることが期待できる.
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