肺がん患者の呼吸困難は、約7割に発症するケアニーズの高い症状である一で、メカニズムや標準的治療法が確立されていない最も対応に難渋する症状の一つである。近年、在宅療養を希望する人が増加する中、在宅における症状緩和は重要な課題であり、病院内だけでなく在宅においても継続した質の呼吸困難ケア実践が望まれている。 本研究は、訪問看護師の肺がん患者に対する呼吸困難ケア実践能力及び必要な教育内容を明らかにするために、肺がん患者に対する呼吸困難ケア実践と影響要因を明らかにすることを目的として実施した。 1. 平成27年度の実施内容 訪問看護におけるがん患者に対する看護介入の現状に関する文献検討を行った。その結果、訪問看護師のがん患者に対する症状マネジメントや看取りに関する能力が十分に育成されておらず、今後の在宅看護推進を目指して訪問看護師の教育システムを構築することの必要性が明らかとなった。一方で、訪問看護におけるがん看護は平成26年に機能強化型訪問看護ステーションの設置等の体制転換期であり、現場の状況が施設によって異なることが示唆された。そのため、本調査実施前に、平成26年度に実施した全国の呼吸器内科・緩和ケア病棟を対象とした調査結果と共に、実際の訪問看護施設から現状をインタビュー等で情報収集し、質問紙の精度を上げる必要があることが明らかとなった。 2. 今後の展望 平成27年度の実践内容結果を踏まえて、訪問看護におけるがん患者に対する看護介入の現状に関する情報収集を行い、質問紙の精度を上げて平成28-29年度に本調査の実施を予定している。本研究は平成27-29年度の3箇年で実施予定であったが、研究代表者の所属施設退職に伴い、平成27年度をもって本助成を辞退した。しかし、本研究テーマは今後増加傾向にある在宅がん患者が苦痛なく療養生活を送るために重要な研究と考えるため、研究遂行は継続する。
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