研究課題
若手研究(B)
ヒトAPOBEC3Fは抗HIV活性を有することが示唆されている。HIV-1のアクセサリータンパク質のひとつであるVifはAPOBEC3Fと結合し、ユビキチン依存的に分解することでAPOBEC3タンパク質の抗ウイルス活性から逃避している。近年、VifがHIV-1特異的細胞障害性T細胞(CTL)を強力に誘導するエピトープになりうる事が示唆された。HLA-B35拘束性CTLはVifのAPOBEC3F結合部位をエピトープとして認識することから、HLA-B35保有HIV-1感染者中でVifはCTLの免疫圧及びAPOBEC3Fの抑制といった相異なるプレッシャーを受けていることが伺える。そこで、HLA-B35感染患者のVifの配列を調べたところAPOBEC3F結合領域に存在するグルタミン酸がリシンに変異していることが見出された。このグルタミン酸をアラニン及びリシンに変異させた変異体を作成し、APOBEC3Fとの結合能、分解能を in vitro にて調べた所、APOBEC3F結合能が減弱し分解出来ないことがわかった。本Vif変異株をヒト化マウスに感染させた所、野生株に比べその増殖能は劣っていたが完全に消失はしていなかった。HLA-B35保有HIV-1感染患者は病態進行が早い事が知られている。これまでの我々の研究成果から、APOBEC3FのHIV-1ゲノムへの変異はウイルスの不活性化だけでなくウイルスの適応進化に寄与していることが伺え、HLA-B35保有HIV-1感染患者中ではVif拘束性CTLから逃避する逃避変異をエピトープ中に挿入することでAPOBEC3Fへの結合能が減弱し、結果ウイルスの適応進化が加速されAIDS発症が進行している可能性が示唆された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件)
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