研究実績の概要 |
近年、ゲノムの標的遺伝子を操作する『ゲノム編集』技術が急速に進歩し、培養細胞のゲノム塩基配列を選択的に改変することが可能となった。しかし、生体内で直接ゲノム配列を改変する事は非常に困難である。申請者は最新の研究成果として、生きたマウスの脳・筋肉にて標的配列を自由に改変する世界初の革新的な技術「HITI」の開発に成功している(Suzuki et al, Nature 2016)。 本研究課題では、研究代表者らが開発したゲノム編集技術「HITI」を発展させ、生体内の随意の組織・器官内で特定の細胞のゲノム情報を自由自在に改変する、次世代ゲノム編集技術の確立を目指す。更に当該技術を発展させることで、難治性遺伝病の治療を目的とした『生体内遺伝子修復治療法』の開発を目指す。 特に平成29年度は、『マウス生体内の随意の組織・器官に遺伝子ノックインを行うための新ゲノム編集技術の開発』に関する研究を行なった。研究代表者らが開発した、生体内での遺伝子ノックイン効率が3%程度と低いことが生体内ゲノムの改変に対して大きな問題点であった。この問題点を解決するために、様々な方法を検討した結果、感染するAAVベクターのタイターを上げる事で、従来では3-10%であった遺伝子ノックイン効率が15-25%まで上昇し、更なる高効率化に成功し、年度目標を達成した。今後は『遺伝性疾患の原因遺伝子を疾病罹患部位特異的に修復する生体内遺伝子修復治療法の開発』に注力する。さらに安全性の検討を新たに行なうことで、安全かつ高効率な生体内遺伝子修復治療法の確立を目指す。
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