研究実績の概要 |
本研究は帰国発展研究として, 申請代表者(千徳)が米国ネバダ大学リノ校・教授を平成28年6月末に退職し, 帰国後, 大阪大学レーザー科学研究所・教授に着任した後平成28年8月より開始した. 研究の目的は高エネルギー密度科学, 特にペタワット級・超高強度レーザー生成プラズマ中の非平衡輻射物理の理論基盤の構築である. 衝突・イオン化などの原子過程, X線輻射過程・輸送過程を含めた先駆的プラズマ電磁粒子コードPICLSを開発し, レーザープラズマ相互作用のシミュレーションのプラットフォームとして, クラスター計算機システムを阪大レーザー研に整備した. PICLSコードは公開されており研究者・大学院生に広く利用され研究に活用されている. 帰国発展の支援により国内外の研究者と連携関係を強化し共同研究環境を構築することができた. 実施した共同研究としては, 輻射過程のモデル構築を広島大学城﨑准教授, 米国ネバダ大学リノ校・Mancini教授とSawada准教授等とともに行った. 実験研究者との共同研究として, 理研播磨研究所の犬伏氏・薮内氏(テーマ「高速電子励起のKα線の増幅」), 量子科学技術研究開発機構の西内氏・甲賀氏(テーマ「高Zイオン加速」・「「ペタワットレーザー加熱物理」), レーザー研の余語准教授他(テーマ「ピコ秒パルスによる高効率プロトン加速」), 藤岡教授他(テーマ「ピコ秒ペタワットレーザーによる高密度プラズマの高速加熱」)などを展開した. 特に, 世界最先端レーザーシステムである阪大レーザー研LFEXレーザーや関西光科学研究所(QST)のJ-KAREN-Pレーザーなどペタワット級レーザーによる相対論的レーザープラズマ相互作用におけるプラズマ形成, エネルギー吸収過程, プラズマ加熱過程, 電子・イオンの加速機構の解明に関して研究を加速度的に進めることができた. 2年8ヶ月の帰国発展支援期間に, 研究成果としてNature Communications(4編), Physical Review Letters(1編), Scientific Reports(1編)を含む15編の論文(国際共著論文9編)を発表し, 学会等で62件(国際会議39件, 招待講演10件)の成果報告を行った. これまでのレーザープラズマ物理学, 特に相対論的電子加速, レーザーイオン加速, 高密度プラズマ中のエネルギー輸送に関する理論研究への貢献と, 革新的且つ独創的なシミュレーション技法の確立が評価され, 2018年9月に米国物理学会フェローに選出された.
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