研究概要 |
本研究では,当研究室で独自に構築した天然医薬資源ライブラリーを素材として,ゲノムサイエンスまたは医療への貢献を目指した新規生物活性低分子の探索を行い,数種の活性低分子化合物の単離および化学構造決定を行った. 1.抗癌薬候補分子探索のために,多くの未利用天然薬用資源の調査・採取を行い,独自の天然物ライブラリーの構築を行った.スクリーニング標的として,細胞周期進行に関わる作用,細胞外マトリックス分解酵素阻害作用,等を主に取り上げた研究を行った.これらに加えて,シグナル伝達系を構成する標的分子やクロマチン構造修飾にかかわるヒストンデアセチラーゼ(HDAC)等を標的としたスクリーニングを開始した. 2.タイ産熱帯植物からスクリーニングにより選抜したショウガ科,リュウゼツラン科,ならびにキク科植物の成分研究を行った.細胞周期阻害成分としてキク科Blumea glomerataよりジテルペンを単離し構造訂正を行った.またリュウゼツラン科Agave fourcroydesおよびヤシ科Calamus insignisからも細胞周期阻害作用をもつ数種の新規ステロイドサポニンを単離した. 3.ヒストンデアセチラーゼ阻害物質のスクリーニング:当研究室に構築した植物エキスライブラリーを活用して,エピジェナティックな遺伝子発現制御に関わる標的として,ヒストンデアセチラーゼ阻害作用に関するスクリーニングを行った.131種の植物に対してスクリーニングを行った結果,有効な活性を示す植物種として4種の植物を選別した.その中の一種であるマメ科植物Xylia kerriiに関して活性成分の精製を行った.その結果,酢酸エチル可溶部の活性画分よりmyricetin rhamnosideを単離した.
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