研究概要 |
【目的】申請者らは、ES細胞を用いた心血管分化研究を行ってきた。本研究は、ES細胞を用いた心血管分化過程の解析を通して、ヒトを含めた哺乳動物の発生および細胞分化機構を解明することを目的とする。すなわち、1)Flk1陽性細胞、心筋前駆細胞群、分化初期心筋細胞からRNAを抽出し、心筋分化過程における遺伝子発現プロファイルを作製する。2)心血管分化過程特異的遺伝子群をゲノム上にマッピングし、心血管分化過程において「開いている」クロマチン構造を同定する。3)siRNAを用いた機能阻害実験により、心血管分化に関与する候補遺伝子の機能解析を行い、心血管分化の機能遺伝子を網羅的に同定する。以上の検討により、哺乳動物の心血管発生過程のゲノムレベルでの理解を目指す。 【結果】ES細胞由来Flk1陽性細胞から単一細胞レベルで心筋を分化誘導することが可能な新しい心筋分化誘導システムを構築し、心筋前駆細胞の予見的(prospective)同定を行った。Flk1陽性細胞から心筋分化途上において、高い心筋分化能を有する心筋前駆細胞の同定に成功した(Yamashita et al.,論文改訂中)。同システムを用いて心筋分化における細胞レベルでの遺伝子プロファイルの検討を行っている。また、テトラサイクリン誘導性siRNA発現システムをES細胞に導入し、ES細胞分化途上における遺伝子機能解析システムの開発に成功した。すなわち、Flk1陽性細胞から内皮細胞への分化途上において内皮細胞マーカーVE-カドヘリン遺伝子発現を抑制し、VE-カドヘリン陰性内皮細胞の誘導に成功している(Hiraoka-Kanie et al.,投稿準備中)。 【結語】ES細胞の心血管分化過程の解析が可能な新しい実験システムを構築し、心血管分化の細胞レベルでの解析および遺伝子機能解析を可能にした。
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