研究課題
特定領域研究
哺乳類では、雌(XX)雄(XY)間でのX染色体の遺伝子量を補正するために、雌で2本の、X染色体の一方の遺伝子発現を一括して抑制している(X染色体不活性化)。不活性化は染色体全体のヘテロクロマチン化(クロマチン構造変換)を伴う染色体レベルの遺伝子発現抑制機構であるが、例外的にヒトでは約15%の遺伝子は不活性化を免れていることが示唆されている。従って、これらの遺伝子は強力なヘテロクロマチン化を免れる機構を保持していると考えられる。本研究では、不活性化を免れる遺伝子の近傍領域でヘテロクロマチンと真正クロマチンの境界部位を検索し、不活性化、ヘテロクロマチン化を免れる機構を明らかにすることを目的としている。ヒト不活性X染色体だけを持つヒト-マウス雑種細胞を用いて、不活性化を免れる遺伝子UBE1、EIF2S3、STSの上、下流の遺伝子の発現状況を調べたところ、UBE1の4kb上流の遺伝子RBM10、EIF2S3の25kb上流の遺伝子KLHL15の発現はヒト不活性X染色体特異的に抑制されていた。従って、この4kb、28kbの領域にクロマチン構造の境界部位があると考えられた。そこでRBM10とUBE1の間の4KBのintergenic領域でのセンス、アンチセンス鎖の転写状況を調べたところ、UBE1から1.5kb上流からRBM10までの2.5kbの領域ではセンス鎖、アンチセンス鎖いずれの転写も不活性Xで特異的に抑制されていた。クロマチン免疫沈降により、この4kbの領域のヒストンの修飾を調べた結果、UBE1から1.5kb上流の領域付近において、真正クロマチン特異的な修飾とヘテロクロマチン特異的な修飾の逆転現象が確認された。以上の結果から、UBE1から1.5kb上流の領域付近でヘテロクロマチン化を免れる構造が存在していると考えられた。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
Nature Genetics 36・12
ページ: 1296-1300