研究概要 |
唇裂・口蓋裂は、新生児に認められる多因子疾患の中で最も頻度が高いもののひとつであるが、その発症には、複数の遺伝的要因と環境因子が関与していると考えられている。本研究の目的は、非症候性の唇裂・口蓋裂患者を持つ日本人家系180家系を対象として、候補遺伝子の遺伝子多型を用いた伝達不均衡テスト(transmission disequilibrium test : TDT)と相関研究を行い、疾患発症に関連する遺伝子を同定することである。本年度は、以下のような成果が得られた:(1)GABAグルタミン酸脱炭酸酵素遺伝子(GAD67)において7つのSNPを同定し、それを用いてTDTを行ったところ、1つのハプロタイプの有意な伝達不均衡を認めた。症例対照研究では、ハプロタイプの頻度分布が症例と対象群で有意に異なることが判明した(Kanno et al.,AJMG 127A:11-16,2004)。(2)ダイオキシンの代謝に関係するaryl hydrocarbon receptor (AHR)、aryl hydrocarbon receptor nuclear translocator (ARNT)、cytochrome P450 1A1 (CYP1A1)の遺伝子について、AHRとCYP1A1については既知のSNPを、ARNTについてはプロモーターを含んだSNPの検索を行い3つのSNPを同定した。これらのSNPについて、TDTを行ったところ、ARNT遺伝子の2SNPの伝達不均衡がみられた(Kayano et al.,AJMG 130A:40-44,2004)。以上のことから、本症の発症に、GABA代謝およびダイオキシン代謝に関連する遺伝子の多型が関与していることが示唆された。
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