研究課題
特定領域研究
細胞内にはタンパク質をコードしないnon-coding(nc)RNAが大量に存在し、これらが機能性高分子として振る舞い、遺伝子発現や細胞の営みに深く関わっていることが次第に明らかになりつつある。機能性RNAは、転写後にスプライシングやRNA修飾あるいはエディティングなどのプロセシングを経て成熟し本来の機能を発揮する。本研究ではRNAの機能発現に必要な修飾構造の全体像の解明をめざす。具体的には、逆遺伝学的にRNA修飾遺伝子を同定する方法(リボヌクレオーム解析)を用い、機能未知遺伝子群から新規なRNA修飾遺伝子を網羅的に探索する。また、これらのヒトホモログの同定を行い、RNA修飾異常に起因する疾患の探索を目指す。さらに、ESTデータベースとゲノム配列の比較から、ヒトおよびマウスmRNAにおけるA→Iエディティング部位の絞込みを行い、微量RNA修飾解析法を用いて新規なRNAエディティング部位の探索を行う。申請者は、大腸菌および酵母の機能未知遺伝子よりRNA修飾遺伝子を網羅的に探索するプロジェクトを行っている(リボヌクレオーム解析)。これまでに大腸菌においては14個、酵母においても7個の新規RNA修飾関連遺伝子を発見した。特にLysidine(L)合成酵素遺伝子の同定[Mol Cell,12,689-698(2003)]したことはリボヌクレオーム解析の大きな成果の一つである。LはtRNA^<Ile>のアンチコドン1字目に位置するCの修飾塩基であり、修飾によってコドン認識がAUG→AUAと変化し、さらにはtRNAのアミノ酸受容能がMet→Ileへとスイッチすることが知られている。本年度は本酵素の基質特異性とLysidine合成反応機構の解析を行った。また、ウリジンの2チオ化に関する新規遺伝子4種に関して機構解析を行った。また、RNAエディティングの探索に関しても、公開されている約500万のESTデータベースとヒトゲノム配列の比較から絞り込まれたA/G置換部位から、ESTの由来臓器や組織の情報を加味することで、A→Iエディティング候補部位の絞込みを行った。また、mRNA中のイノシンの同定に関しては、イノシン特異的な化学修飾とリアルタイムPCRを用いた方法を確立した。現時点でこの方法により約10ngのトータルRNAから、部位特異的なイノシンの検出に成功し、実際に13種類の遺伝子中に新規イノシン部位の同定に成功した。
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