研究概要 |
本研究では、排出系機構の実体であるABCトランスポータ遺伝子をモデル系とし、遺伝子多型が薬効および副作用発現に関与するか否かを検討した。 1.MDR1: (1)小児急性リンパ性白血病(ALL)における相関解析:遺伝子多型-2352G>AについてMTX投与後の血清ビリルビン値との間に有意な相関を認めた。ALL患者群では、-2352G>AのG/G多型(p=0.04,OR=1.8)およびディプロタイプA(p=0.02,OR=2.1)の出現頻度が対照群に比べ有意に高かった。-2352G>A多型において、G/G多型はそれ以外に比べて発症年齢が高く(6.5歳vs5.4歳,p<0.01)、対照群との比較でも6歳以上発症群におけるG/G多型の出現頻度が有意に高かった(p<0.01,OR=3.9)。3435C>Tについても、ALLにおいてT/T多型がそれ以外に比べて高頻度であった(p<0.01,OR=2.8)。 (2)多型とMDR1のmRNA発現量との関連解析:-2352G>A多型において発現量とアリルタイプの間に相関が見られ、A/A型で有意に発現量が低下していた。またハプロタイプにおいてもhaplotype 1を少なくとも一つ有するものは全く有しないものに比べ、有意に発現が高かった。末梢血単核球においても遺伝子多型によって、MDR1 mRNAの発現量が異なることが明らかとなった。 2.MRP2: (1)ALLにおける相関解析:MRP2遺伝子多型3972C>Tおよび-924G>A多型は、白血病表面マーカーおよびMTX投与後の血清ビリルビン値との間に有意な相関を認めた。またint19C>T多型において、マイナーアレル(T)と、診断時白血球数≧1万/mlとの間に有意な相関を認めた(p=0.049)。 以上より、ABCトランスポータ遺伝子がALLの発症および副作用発現に関与する可能性が示された。
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