研究概要 |
マウスの第10染色体にコードされる遺伝子(MALS-1:mammalian homologue of LIN-7)のノックアウトマウスを作製して解析する過程で、聴源性てんかん(audiogenic seizure : AGS)の感受性に関与する新規遺伝子座を同定した。Black Swissマウスは100%の浸透率で聴源性てんかん発作をおこすが、この感受性は生後21日目をピークとして、以後成長に伴って消失する。このてんかん感受性は劣性遺伝様式をとり、連鎖解析によって約1センチモルガン(cM)の遺伝子領域に絞り込み、jamsl(juvenile audiogenic monogenic seizures)と名付けた。 マウス多型マーカーを用いた連鎖解析(3,000匹以上)により絞り込んだ約300kb領域(jams-1 critical region)に存在が推定される全遺伝子(総数25)の定常状態でのmRNAの発現レベルおよび全翻訳領域とExon-Intronの境界領域の塩基配列をBlack SwissとC57BL/6で比較したところ、GIPC3(GAIP interacting protein, C-terminal : ENSMUSG00000034872)のPDZドメイン内で1箇所のアミノ酸変異(G117R)が見つかった。このグリシン残基は線虫からヒトに至るまで保存されており、この箇所の変異はPDZドメインとリガンドとの結合を阻害する可能性が高い。In-situ hybridizationにより脳におけるGIPC3の発現細胞を検索したところ、GIPC3は広範な神経細胞で発現することが認められたが、興味深いことに、聴覚伝導路である蝸牛神経核や下丘での強い発現が認められた
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