研究概要 |
1.ポリアミンは細胞内では主としてRNAと結合して存在しており、RNAの構造を変えることにより生理作用を発揮する。大腸菌のポリアミン生合成酵素欠損株をポリアミン存在下あるいは非存在下培養し、ポリアミンにより合成促進を受ける蛋白質として、栄養源としてオリゴペプチドを細胞内に取り込む際に必要なオリゴペプチド結合蛋白質(OppA)、アデニル酸シクラーゼ、並びにRNAポリメラーゼσ^<38>の3種をこれまでに同定した。これらポリアミンにより翻訳レベルで発現調節を受ける遺伝子群をポリアミンモジュロンと命名し、本年度は更なる探索を行ったところ、rRNA、tRNAの転写及びエネルギー産生に関与する数種の遺伝子の転写調節を行うFis蛋白質と鉄輸送オペロンの転写因子Fecl(σ^<18>)蛋白質の合成がポリアミンにより翻訳レベルで促進を受けることが明らかとなった。Fis mRNA及びFecl mRNA共に開始反応に重要なSD配列の存在が明瞭でなかったので、明確なSD配列を持つ変異mRNAを構築してFis及びFecl合成を行ったところ、ポリアミンによる合成促進が消滅した。従って、弱いSD配列の構造をポリアミンが変えることにより、Fis及びFecI合成が促進を受けることが明らかとなった。 2.マウスFM3A細胞でポリアミン減少細胞を調製し、翻訳レベルで合成阻害を受ける蛋白質として以下の10種を同定した:1)78kDa glucose regulated protein、2)heat shock cognate 71kDa protein、3)heat shock protein 60、4)T-complex protein 1,β subunit、5)T-complex protein 1,ε subunit、6)vimentin、7)heterogenous nuclear ribonucleoprotein L、8)heterogenous nuclear ribonucleoprotein A/B、9)phosglycerate mutase 1、10)antioxidant protein 2。現在、ポリアミンによる合成促進メカニズムを検討中である。
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