研究概要 |
本研究は,分裂酵母における組換え修復にかかわる遺伝子を総括的に同定し,この修復システムの全体像を解明することを目的としている.今年度は以下の研究実績をあげた. Rhp51依存的な組換え修復経路には,2つの平行な副経路(Rhp55/57経路とSfr1/Swi5経路)が存在することを明らかにした.Sfr1タンパク質は,Rhp51タンパク質及びSwi5複合体を形成し,DNA損傷で誘導されるRhp51のfocus形成に関与すること明らかにした.また,生化学的な解析から,Sfr1/Swi5は,安定なタンパク質複合体を形成し,Rhp51による試験管内組換え反応を促進することを明らかにした.その他の遺伝学的解析もふまえて,Sfr1/Swi5は,Rhp51のメディエーターであると結論された.Rhp55/57経路とSfr1/Swi5経路の機能的差異を調べる目的で,HOエンドヌクレアーゼで1ヶ所DNA二重鎖切断を誘導できるミニ染色体を有する分裂酵母株を作成して,このDNA二重鎖切断の修復産物をモニターする系を構築した.現在,このシステムを用いて解析しているところである. 一方,組換え修復遺伝を同定する目的でrad2合成致死変異株のスクリーニングを行っていたが,新たな遺伝子を同定してnip1と命名して,分子遺伝学的な解析した.その結果,Nip1タンパク質は,組換え初期過程の二重鎖切断末端に作用するMRNタンパク質複合体と相互作用し,この複合体の活性を制御している因子であることが示唆された.
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