研究課題
特定領域研究
本研究の目的は、ラン藻のゲノム情報を基にして環境センサー・転写因子・環境ストレス応答性遺伝子の機能を統合的に理解することである。本年度は以下に示した成果が得られた。1.ラン藻Synechocystis PCC6803株の浸透圧ストレスシグナルの検知と信号伝達に関わる5つの二成分制御系を、ヒスチジンキナーゼとレスポンスレギュレーターの網羅的破壊株ライブラリーのスクリーニングにより明らかにした。一つの生物の中で機能する複数の浸透圧センサーが同定されたことは大変興味深い。また、それぞれの制御系は独立しており、それぞれ異なる遺伝子群(レギュロン)の発現を制御することがわかった。それぞれのセンサーがどの様な刺激を検知しシグナルを発信するのか興味が持たれる。浸透圧条件で発現制御が見られる遺伝子の中には、本研究で明らかにした5つの二成分制御系で制御を受けない遺伝子も多数有り、まだ見つかっていない制御システムの存在が示唆された。2.ラン藻Synechocystisの塩ストレスへの応答をDNAマイクロアレイで調べ、塩ストレス応答性遺伝子の発現誘導プロファイルが一様ではないことを明らかにするとともに、多くの塩ストレス誘導性遺伝子の発現は一過的であることを明らかにした。これらの一過的に発現が誘導される遺伝子群は多数の機能未同定遺伝子を含み、塩ストレス応答の機構には未知の機構が存在することが予想された。これまでの塩ストレス応答に必須だと考えられていた適合溶質(グルコシルグリセロール)合成に関わる遺伝子群は発現が24時間後まで高いレベルに維持される数少ない遺伝子の一つであった。
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