研究概要 |
生物システムの体系的理解のためには、遺伝子の発現制御を担うプロモータの情報構造の解明は極めて重要な課題である。本研究では、プロモータ領域に潜む特徴や規則性と発現制御との関係を明らかにすることを目的に、ヒトやマウスをはじめとする様々な生物種間の比較ゲノム解析を通して、ヒト遺伝子のコアプロモータ領域の詳細な解析を行った。 ヒト遺伝子の多くはCpGアイランドを持っており、遺伝子のユビキタスな発現に関与しているといわれている。本研究では約7,000遺伝子のプロモータをCpGアイランドを持つもの(6,000個)と持たないもの(1,000個)に分類して解析を行った。DNAマイクロアレイを用いた発現プロファイル解析では、CpGアイランドを持たない遺伝子の方がCpGアイランドを持つものと比較してより組織特異的に発現する傾向が認められた。特に、1〜数組織でのみ発現している遺伝子はすべてプロモータ領域にCpGアイランドを持たないものであった。 次に、これらのヒトプロモータ配列を、マウス、ラット、イヌのゲノム配列と比較解析した。全体的に、転写開始点近傍での保存度は高く、50bpのウインドウでpercent identity (PID)を調べたところ、9割のプロモータが70%以上のPIDを持つことが分かった。転写開始点から上流に離れるほど保存度は低くなるが、CpGアイランドを持つものと持たないものでその傾向には大きな違いが認められた。ヒトとげっ歯類との比較では、転写開始点から上流-200bpあたりまでの保存度がCpGアイランドを持たない遺伝子で有意に高いことが分かった。ヒトとイヌの比較ではより顕著で、上流-500bpから下流+500bp以上の広い領域で、CpGアイランドを持たないプロモータの方が持つものと比較しても、またげっ歯類のプロモータと比較しても保存度が高いことが分かった。
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