研究課題/領域番号 |
16015253
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
貝淵 弘三 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00169377)
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研究期間 (年度) |
2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
2004年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | 極性 / 神経細胞 / CRMP-2 / GSK-3β / STEF / PRA-3 / Cdc42 / Rac |
研究概要 |
生体を構成する種々の細胞はその固有の機能を発揮するために極性を獲得する。具体的な例として、軸索及び樹状突起という極性の異なる突起を有する神経細胞などが挙げられる。しかしながら、これらの細胞がどのようにして極性を獲得するか、その分子機構は現時点ではほとんど理解されていない。以上の状況を踏まえて、本研究では、神経細胞及び上皮系細胞の細胞極性を制御する細胞外シグナルやその伝達メカニズムを明らかにすることを目的とする。 我々はcollapsin response mediator protein-2(CRMP-2)が軸索/樹状突起の運命決定を担い、極性形成や軸索伸長に重要な役割を果たすことを提唱している。昨年度、ラミニンなどの接着分子の下流でPI3-kinaseが神経突起先端で活性化され、産生されたPIP3によって未成熟な神経突起が軸索へ運命決定されることを示した。さらに、PAR-3がKIF3によって、未成熟な神経突起の先端に輸送され、神経細胞の極性を制御することを報告した。本年度は、1)PI3-kinase/PIP3系とCRMP-2の関係を明らかにすることを目的に解析を進めたところ、GSK 3betaがCRMP-2をリン酸化して不活性化すること、PIP3が産生されるとAktを介してGSK 3betaがリン酸化されて不活性化されることを見出した。また、GSK 3betaの阻害剤等でCRMP-2のリン酸化レベルを下げると通常一本の神経軸索が複数本形成される事が明らかになった。以上の結果より、神経細胞の軸索形成、及び極性形成にGSK 3betaによるCRMP-2のリン酸化が重要な役割を果たしていると考えられる。また、2)CRMP-2は微小管モーターであるKinesin-1の軽鎖であるkinesin light chain(KLC)と直接結合し、軸索の先端に輸送されることを見出した。KLCの機能をsiRNAによって抑制すると、CRMP-2の軸索先端での濃縮が減少し、軸索の形成不全、及び神経極性に異常が見られることが明らかとなった。Kinesin-1はCRMP-2等の極性形成分子の輸送を介して極性形成に重要な役割を果たすと考えられる。さらに、3)PAR-3の上流または下流のシグナル伝達分子については不明であったが、今回我々は、PAR-3がRac1-特異的GDP/GTP交換因子であるSTEFと結合して活性化することを見出した。PAR-3は神経軸索の先端でSTEFを介してRacの活性を調節して神経極性を制御している可能性あると考えられる。 本年度の成果は細胞極性形成機構を理解する上で極めて重要である。従って本年度の研究計画はほぼ達成することができたと考えている。
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