研究概要 |
本研究では,コモディティハードウェアによる高性能な計算環境の実現を目的として,PCI Express技術を用いたクラスタ環境を構築し,比較対象として分散共有メモリ型並列計算機のSGI Altix 3700を用いてその性能を評価するとともに,コモディティ技術の可能性と実装上の問題について検討した.GbEネットワークおよびInfiniBandネットワークを使用した疎行列反復解法ライブラリでの評価の結果,同一の計算性能,レイテンシのネットワークにおいても,帯域幅が小さい場合にはスケーラビリティに限界があり,性能低下が見られることが分かった.このことは,疎行列線形計算においては(レイテンシよりも)帯域幅が性能を制約していることを示している.また,Altixとの比較結果から,PCI Express技術の活用によって既存の並列計算機を上回る計算性能が実際にコモディティハードウェア上で得られることを示した. さらに,平成17年度10月からは,より大規模な構成のOpteronサーバと複数のPCI Expressスロットを利用した広帯域なクラスタシステムを構築するとともに,筑波大学の協力を得て,MPIを通信レイヤに用いたソフトウェア分散共有メモリ環境向けOpenMPコンパイラOmni/SCASH MPIの移植・評価を行い,ソフトウェア分散共有メモリ技術の可能性と問題点について検討した.この結果,ノード間の通信帯域幅及びノード内のメモリ帯域幅の確保に重点を置いて計算環境を構築することにより,4-wayサーバを利用したクラスタ環境においても,スケーラブルな計算性能を実現できることを示した.ただし,疎行列処理においてはバリア同期等の前処理に必要なコストが他の計算に比べて大きいことから,ノード内での処理オーバヘッドを一層低減する必要があると考えられる.
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