研究概要 |
本年度の主な研究成果は以下のとおりである. 1.オントロジを用いた要求獲得方法論とその支援ツールの開発 オントロジを問題領域固有の知識(ドメイン知識)として活用し,要求獲得時に生じる要求の欠落や,矛盾した要求の候補を検出しつつ,要求を獲得・詳細化していく方法論を開発した.この方法論では,完全性や無矛盾性を数値化して要求分析者に提示し,分析者は提示された数値を参照し,欠落した要求の追加,曖昧な要求の改善,矛盾した要求の選択,不適当な要求の削除といった作業がガイドされていく.この方法論を支援するツールの開発も行った.オントロジとその上での推論規則はPrologを,ユーザインタフェース部分はJavaを用いて実現した.完全性などの品質メトリックスの計算,要求の欠落候補や矛盾している部分の候補の検出には,Prologの推論,計算機構を用いた.分析者は,要求リストをあらかじめ用意してあるオントロジの概念リストに対応づけると,ツールはメトリックスを計算したり,候補を提示したりしてくれる.分析者はこれらの情報を参考にしながら,ツール上で要求を追加・詳細化していく. 2.オントロジベースのソフトウェアリポジトリの開発 要求仕様を蓄積し,その意味的要素を単位として構成管理や版管理まで行うリポジトリシステムを実現した.このリポジトリシステムは要求仕様のメタモデル中の構成要素をオントロジとし,なされた変更に矛盾がないかどうかをオントロジ上の意味的推論システムを用いてチェックする. 3.デザインパターンのモデル化と検出手法の研究 デザインパターンの構成要素のロール名をオントロジと考えモデル化し,ソースコード中からデザインパターンを検出する手法を開発した.検出手法はソースコードの構造を解析する静的解析と実行系列を解析する動的解析を組み合わせ,デザインパターンはPrologを用いて記述した.これにより,デザインパターンのオントロジを用いた設計の意味的情報の検出が可能になった.
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