研究概要 |
IFN-α/βによる抗ウイルス応答の発現メカニズム及び病原体認識受容体であるToll-like receptor (TLRs)下流でのIFN遺伝子誘導へ至るシグナル伝達経路の解明に焦点を合わせ,特にこれまでウイルス感染によるIFN-α/β産生に関与することが知られているIRF (interferon regulatory factor)ファミリー転写因子との関連性に着目し,IFN-IRF系の役割を検討すること目的とした.その結果,まず,IFN-α/βによってISGF3転写複合体を介してp53遺伝子が発現誘導されることを見出し,ストレス刺激に対するp53応答を有意に増強させることが明らかとなった.この結果は,従来癌抑制因子として知られているp53がウイルス感染によってリン酸化を受け,活性化され,抗ウイルス免疫応答において重要な役割を果たしているという,感染防御での新たな局面を見出した.一方では,各種IRF転写因子の遺伝子欠損マウスを用いた解析により,pD CsにおけるTLR9サブファミリーメンバーを介するシグナルにおいて,IRF-7を介した新らたなMyD88依存性のIFN産生誘導経路を見出した.また,TLR9リガンドの細胞内挙動とIFN産生性との関連において,MyD88-IRF-7シグナルが時空間的制御を受けることが,pDCsのIFN高産生性を説明する制御機構の1つであることを示唆する結果が得られた.これに加え,新たに,MyD88との会合を示すIRF-5を介した炎症性サイトカイン産生誘導経路の存在を見出した.さらにIRF-5が実際のウイルス感染で活性化を受け,ウイルス感染によるアポトーシス誘導に関与しているという結果が得られた.一方,別のIRF転写因子であるIRF-4が.IRF-5に対して競合阻害を示す抑制因子として,IRF-5経路の負の制御をしていることも明らかとなった.このようにTLR下流において多くのIRF転写因子が重要なメディエーターとして働き,自然免疫応答活性化を制御していることが示された.
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