研究概要 |
「目的」セマフォリン分子群は従来発生過程での神経ガイダンス因子として同定されてきた分子群であるが、近年免疫応答における役割が明らかになりつつある。本研究計画では、免疫系で機能するセマフォリン分子を標的とした新たな宿主免疫応答の人工的操作法の分子的基盤を確立することを目的とする。「結果」抗原をパルスした樹状細胞をSema4Dのリコンビナント蛋白で処理することにより、樹状細胞ワクチン効果が増強できることを見出した。次に樹状細胞のcDNAライブラリーよりSema4Aを新たにクローニングするとともに、Sema4AがT細胞の活性化に寄与すること、また発現クローニングによりSema4Aの受容体としてヒトA型肝炎ウイルス受容体とホモロジーを有するTim-2を同定した(Nature 419,629-633,2002)。更にSema4Aの生体内での機能を明らかにする目的でSema4A欠損マウスを作成し、Semaa4AがT細胞ブライミンおよびTh1/Th2制御に関与していることを明らかにした(Immunity 22,305-16,2005)。 「考察」本研究により免疫応答の様々な局面でセマフォリンが重要な機能を担っていることが明らかとなった今後より感染に対してより効果的かつ実用的な宿主免疫応答を誘導法の検討が必要である。「意義」セマフォリンが新たな免疫調節分子群を形成していることが明らかとなるとともに、その活性を担う受容体の同定によりその作用メカニズムが明らかとなった。今後この分子基盤にたった新たな宿主免疫応答の人工的操作法の確立が期待される。
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