研究概要 |
Porphyromonas gingivalisは,慢性歯周炎(成人性歯周炎)患者の歯肉縁下歯垢より高頻度に分離されるグラム陰性嫌気性桿菌であり,同菌体表層由来の種々の病原因子が知られている.これらのなかで,細胞壁外膜に存在する内毒素性リポ多糖(LPS)は,歯周病巣局所において歯槽骨の吸収などを惹起することで重要であるとされる.これまでにP.gingivalis LPSやその活性中心であるリピドAは,大腸菌由来LPSやリピドAの受容体であるToll様受容体(TLR)4とは異なりTLR2を介して細胞を活性化することが報告されている.本研究において,P.gingivalis LPS画分からTLR2リガンドである成分を分離・精製することに成功し,その化学構造がPG1828遺伝子にコードされるトリアシル型リポタンパク質(Pg-LP)であることを明らかにした.さらに,本年度はPG1828リポタンパク質遺伝子欠損菌株を樹立し,同温水フェノール抽出物(LPS画分)の性状や生物活性について検討した.その結果,同欠損菌株由来LPS画分は,野生型菌株由来LPSと同様の銀染色パターンやリムルス活性を示した.しかしながら,これら欠損菌株由来LPS画分は,TLR2を介した細胞の活性化やマウス致死活性については,野生型のそれと比較して著しく低下した.以上の結果から,これまでに報告されているTLR2を介するP.gingivalis由来LPS画分中に含まれる活性分子は,トリアシル型リポタンパク質であることが強く示唆され,主たる歯周病原細菌であるP.gingivalis由来の新しい病原因子として注目される.
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