研究課題
特定領域研究
Stxに高感受性を示す腎癌由来細胞株ACHNを用いて、遺伝子組換え型Stx-1Bサブユニット(Stx-1B)を添加した場合に誘導される遺伝子発現の変化について、Gene Chipを用いた網羅的解析を行った。この結果、Stx-1Bの結合刺激によって発現誘導される遺伝子群として、AP-4、E12/E47等の転写因子、p55およびp85-PI3キナーゼ、IκB、MAP kinase phosphatase-1、Rac/Cdc42 GEF6等の刺激伝達関連分子、Bcl-G、Bcl-2-associated athanogene等のアポトーシス関連分子が同定された。さらに興味深いことにGM-CSF、IL-6、IL-8、PDGF-β等のサイトカイン/増殖因子の遺伝子発現も増強されることが明らかとなった。逆に発現が減少する遺伝子として、Gα11、PKC-δ、MKK-5等の刺激伝達分子や、TGF-α等の増殖因子、Fascin-3等の接着因子が明らかになった。以上の結果は、Stx-1Bの結合に伴うラフトを介する刺激伝達が、実際に細胞内での様々な遺伝子発現の変化を引き起こす事を示している。一方、ACHN細胞ではStx-1Bの添加により細胞骨格系の再構成が起こるが、アポトーシスの誘導は起こらない。しかし、正常ヒト腎皮質上皮由来の初期培養細胞(HRCEC)では、Stx1 Bのみでもアポトーシスによる細胞死が誘導されることが確認された。両者の比較を行ったところ、ACHN細胞ではBcl-2の発現がHRCECに比較して非常に高いことがその一因であることが示唆された。ACHN細胞とHRCECとのStx1 Bによる細胞内刺激伝達の差について解析することにより、Stx1結合による細胞死誘導の発生要因について、また逆にStx1 Bによるアポトーシスを抑制する手段について明らかになることが期待される。
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