RecQヘリケース遺伝子ファミリーの3種類は、いずれも高発がん性を示すウェルナー、ブルーム、ロスムンド・トムソン症候群(RTS)の各原因遺伝子として同定されたが、高等生物の生体内におけるこれら遺伝子産物の機能は不明な点が多い。そこでWRN、RecQ1、RecQ4、RecQ-5の4種類についてKO-Miceを作製し、老化の表現型、発癌、DNA組換え、修復異常、ゲノム不安定性などの観点から解析している。 Type II RTSの原因遺伝子であるRecQ4遺伝子に関して3種類の変異アレルのKO-Miceを作製し、解析して得られた結果を以下に報告する。ほぼ「ヌルタイプ(Nアレル)」となるホモ変異体は、胎生3.5〜6.5日にアポトーシスの亢進により致死であった。胎生3.5日胚のブラストシストのin vitroにおける細胞増殖活性は統計的有意に低下しており、細胞周期を解析した結果、late G2 arrestが起っていることが明らかになった。したがって、このNアレル単独では病態モデルマウスを樹立することは不可能であったため、新たにCre-loxPシステムにより欠失可能な「コンディショナル変異(S'アレル)を導入したマウス」と、「ヘリケースドメイン以降のC端を欠如するトランケーションタイプ(Tアレル)の変異を導入したマウス」をそれぞれ樹立した。 「S'/Nコンパウンドヘテロマウス」と「Tホモ変異マウス」はほぼメンデル則で得られ、性差にかかわらず成長遅延であり、加齢に伴い白髪化や皮膚病変が顕著に認められた。これらの結果はRTS患者で報告されている病変を極めて良く反映する結果であった。また、各KO-Miceから樹立した線維芽細胞株のin vitroにおける細胞増殖活性は、5種類のDNA修飾試薬に対する感受性には有意な差は認められなかったが、紫外線照射による感受性は、弱いながらも変異マウス由来の細胞株の方が高感受性であった。
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