研究概要 |
申請者らは以前テトラサイクリン感受性のU6プロモータを用いて,テトラサイクリン誘導性ヘアピンsiRNAの発現システムを構築し,DNA methyltransferase 1(DNMT1)を標的として,ウェスタンブロットで検出不能となる程度まで発現が抑制される事を示した.本課題では,ほ乳類で活性が確認されているこのほかのDNMTである,DNMT3A, DNMT3Bをテトラサイクリン誘導性ヘアピンsiRNAを用いてノックダウンし,その機能の解析を行うことを目指している.本年度はベクターの改良ならびにヘアピンのループの及ぼす転写抑制に対する影響を検討しつつ,DNMT3A, DNMT3Bに対するヘアピンsiRNAベクターの構築を行った.まず,ヘアピンsiRNAベクターの構築については,最近報告された,いくつかの点を参考に改良を行った.まず,以前我々が構築したU6プロモーターのベクターは,Promega社pGEM-TEasyを骨格としているため,ヘアピンをコードするオリゴDNAの挿入について用いることのできる制限酵素認識配列が,AatIIおよびApaIしかなく,また,AatIIがスター活性を有するため,ヘアピンsiRNAベクター構築時のオリゴDNAの挿入にはしばしば難渋した.このため,プロモーターの下流に50塩基のオリゴDNAを挿入,新たに9つの制限酵素認識配列(XmaI,NarI,XhoI,BglII,XbaI,HindII,AflII,BamHI,MfeI)を構築した.DNMT3Aについては5つの異なる部位を標的とするベクターを構築し,ウェスタンブロットを用いて,その効果を検討したところ,2つのヘアピンsiRNAで,発現量が50%まで抑制されるベクターが得られた.ヘアピンのループについてはBrummelkampらの報告[Brummelkamp et al.,science 296(5567):550-3(2002)]に則りTTCAAGAGAの9塩基を用いた.また,最近のMiyagishiらのGTGTGCTGTCC[Miyagishi et al.,J Gene Med.;6(7):715-23(2004)],以前申請者らが報告したAatII配列GACGTCについても,同じ標的配列を用いて比較をしたところ,予想に反して,AatII配列が最も,発現抑制効果が強く,siRNAの転写量等について,現在検討の準備を行っている.一方DNMT3Bについては,ウェスタンブロットで,これまでのところ構築したヘアピンsiRNAベクターでは発現量が70%程度にまで抑制されるベクターを得ている.
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