研究課題/領域番号 |
16021217
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鎌田 徹 信州大学, 医学部, 教授 (40056304)
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研究分担者 |
斎田 俊明 信州大学, 医学部, 教授 (10010381)
安達 善文 信州大学, 医学部, 助教授 (50201893)
篠原 正浩 信州大学, 医学部, 助手 (60345733)
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研究期間 (年度) |
2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
6,800千円 (直接経費: 6,800千円)
2004年度: 6,800千円 (直接経費: 6,800千円)
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キーワード | Nox1 / Ras / 活性酸素 / 癌 / RNAi / MAPkinase / 転移 / 情報伝達 |
研究概要 |
本研究の目的は、ヒト悪性腫瘍の多段階発生機構における活性酸素産生遺伝子Nox1の媒介的役割をRas発癌モデルを用いて解明し、癌治療の方法的基礎を築くことにある。我々は、既にRas-MAPK経路によっで誘導されるNox1の産生するsuperoxideが、Rasの癌化形質に必要であることを明らがにした。この知見は、Nox1によって産生されるROSが、ヒト腫瘍形成においても、signal分子として、重要な媒介的役割を果たすことを示唆する。しかし、これに関しては憶測の域を出ておらず、またNox1作用の分子機構、情報伝達経路には未解明な部分が多い。こうした現状を踏まえ、本研究では1)ヒト癌におけるNox1ファミリーの媒介的役割の解明、2)Nox1によって産生されるROSの標的蛋白の同定、3)Nox1遺伝子発現の調節機構の解析を行った。 研究項目1:Nox1 siRNA, Nox4 siRNAを作成し、Nox1を不活化すると、大腸癌細胞にアポトーシスが引き起こされ、またNgx4を不活化すると、メラノーマ細胞の増殖を抑制し、膵癌細胞のアポトーシスが引き起こされることが判明した。 研究項目2:Nox1を導入した上皮細胞蛋白を5-IAF標識したのち、ToF-Mass分析を用い、ROSによって修飾をうける蛋白を探索した。その結果、分子量30〜90kDaの4つの細胞質蛋白が有意に修飾をうけることが判明した。現在、これらの蛋白群の癌化における機能的役割の検討を行っている。 研究項目3:開発したEMSA5-IAF標識法を用い、大腸癌細胞よりRas-MAPKでリン酸化。活性化され、Nox1プロモーターに結合する82kDaと34kDaの2成分からなる。転写複合体を精製した。現在、ToF-Massで同定中である。以上の結果により、Nox1は、ヒト大腸癌の形成過程にも必須な癌関連遺伝子であり、また、腎臓で正常な生理機能を果たすファミリー遺伝子Nox4も、異所高発現又は活性化されることにより、細胞内ROS産生を高め、膵癌やメラノーマ発生を促進すると考えられる。本研究で、ヒト癌レベルでも、Noxファミリーの産生するROSの重要性が示されたといえる。困難を極めるROSの下流標的蛋白同定の研究で、幾つかの候補蛋白が単離されたことは、特筆すべきで今後の同定・機能解析の結果が強く待ち望まれる。最後に、Nox1遺伝子の、転写因子のサブユニット構造が解明されたことにより、この分野の研究が飛躍的に前進した。サブユニット蛋白の分子種の同定結果が待たれる。以上、Nox1を標的とした癌治療を模索する上で今後、Nox本体、及びその情報伝達分子の機能解明の重要性が深まったといえる。
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