分裂酵母のユビキチン結合酵素E2(Ubc)の欠損による表現型を系統的に調べる過程で、その一つ、Ubc7の欠損した細胞では相同組み換えの頻度が劇的に上昇していることを見い出した。さらに、Ubc7破壊株の細胞は紫外線やMMSに対して野生株より抵抗性を示し、この抵抗性がRhp51(RecAホモログで、組み換え反応で中心的役割を果たす)の活性に依存していた。これらのことは、Ubc7欠損が相同的組み換え能とそれに伴うDNA障害の修復能のそれ自体を活性化していることを示唆していた。また同時に、相同組み換えの頻度の上昇が染色体全領域で一般的に起こっているものであることも示唆している。 ユビキチンリガーゼの最も基本タイプのサブファミリーはCullinタンパク質(Cul)をコアにして、ユビキチン結合酵素E2(Ubc)、活性中心としてのRing Fingerタンパク質、基質認識の役目を担うアダプタータンパク質を配置した複合体である。分裂酵母には3種(cullin1、3、4)がホモログとして存在する。Pcu3欠損株で重複配列間のポップアウトの頻度が上昇し、紫外線とMMSに対して野生株よりも抵抗性を示した。同じ頃、米国のグループから分裂酵母Ubc7はCUL3ホモログのPcu3と相互作用することが報告された。 Cullin3に結合するタンパク質群としてBTBドメインを有するタンパク質が注目された。分裂酵母には現在までに3種が認められる。これらが基質との相互作用を担うアダプター分子として作用する可能性があるので、これらと相互作用するタンパク質の検定を2-hybrid法とタグ標識したBTBタンパク質と共免疫沈降するタンパク質の検索を行っている。 他方、この間に我々が観察した組換え頻度の上昇が、分裂酵母の一部の株に固有である(株依存性がある)ことが判明し、このユビキチン系による組換えの制御にはもう一つの未知の因子が関わると考えられる。この因子が何であるかを現在検索中である。
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