研究概要 |
ヒトHIPK2はp53-p53AIP1経路アポトーシスに関与していると考えられているが,マウスではp53AIP1遺伝子は見つかっていない.また,HIPK2のp53リン酸化部位Ser46はマウスp53には保存されていない.他方,CtBP1のリン酸化を介してp53非依存的に細胞死を誘発するという報告もある.したがって,本年度ではマウスHipksがどの経路に関与しているかをp53/Hipk1/Hipk2欠損マウス胚繊維芽細胞で評価した.また,新規のHipk依存アポトーシス関連分子を同定するためにマイクロアレイ解析をおこなった.前者に関して,p53,Hipk1/Hipk2,p53/Hipk1/Hipk2欠損細胞はUV誘導性細胞死を同程度に抑制した.よって,マウスHipksもp53経路に属している可能性があるが,先の矛盾点からHipksとp53の相互作用は直接的でないかもしれない.一方,UV照射により野性型細胞のCtBP1レベルは低下するが,Hipk1,Hipk2,Hipk1/Hipk2欠損細胞のそれらは変化しなかった.これは既報のHIPK2-CtBP1モデルを肯定するものであるが,Hipk1あるいはHipk2欠損細胞の細胞死抵抗性はHipk1/Hipk2欠損細胞のそれに比べ著しく低いことから,CtBP1の安定化だけではそれらの抵抗性を説明することができない.まとめると,HipksのUV誘導細胞死への関与は,決して単純ではなく多面性を持っていると考えられる.その理解のためにマイクロアレイ解析をおこなった.その結果,UV処理した野性型とHipk1/Hipk2細胞との間で,3倍以上の変化を持つ遺伝子が20個近く同定されたが,その中にはHipks欠損による表現型を明瞭に説明できるものは含まれていなかった.しかしながら,アポトーシスに関連したそれら遺伝子の新規機能を否定することはできない.
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