研究概要 |
脂質滴はほとんどの細胞に見られる構造であり,コレステロールエステルなどの中性脂質が集積する.脂質滴は膜脂質組成の調節に関係し,それにより膜ミクロドメインの構造やそこでのシグナル伝達制御にも関わると考えられる.脂質滴機能を明らかにする目的で,脂質滴成分を網羅的に解析し,新たな脂質滴蛋白質を同定した.今年度はRab18について解析した. 抗Rab18抗体による標識,EGFP-Rab18の観察より,Rab18が脂質滴に特異的に局在することを確認した.脂質滴マーカーであるADRPとの二重標識により,両者は脂質滴表層に共存するが,その標識強度は相補的であった.EGFP-Rab18を強制発現させると,導入分子が発現した脂質滴でのみADRPの標識強度が低下し,Rab18はADRPを排除することが示された.EGFP-Rab18を発現した細胞を電顕観察すると,小胞体またはその延長部分が脂質滴と密着する構造が高頻度で観察された.ADRPをRNA干渉法で発現抑制した細胞,およびBrefeldin A処理でADRPを脂質滴表層から脱落させた細胞でも同様の密着構造が見られ,いずれの場合も対照群に比較して有意の差が認められた. これらの結果はGTP結合蛋白質であるRab18が脂質滴表層に結合する性質を持ち,さらにADRPを排除することで小胞体と脂質滴の密着構造形成を誘導することを示す.小胞体との密着構造はミトコンドリアや細胞膜でも観察され,いずれも膜間の脂質移動に関係すると考えられている.Rab18が誘導した小胞体・脂質滴間の密着構造についても同様の機能を持つと推測され,その結果として膜ミクロドメインに影響を与える可能性が考えられる.
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