研究概要 |
【目的】本研究は、申請者らの系統的動静脈リンパ管内皮細胞分化誘導システムを用いて、内皮細胞多様化機構を明らかにし、腫瘍血管リンパ管に対する新しい治療戦略開発することを目的とする。すなわち、1)動静脈リンパ管内皮特異的分化誘導法を確立する。2)同分化系を用いて動静脈リンパ管分化機構を解析する。3)動静脈リンパ管内皮細胞をそれぞれ純化する。4)純化細胞を用いて内皮細胞多様化過程における遺伝子プロファイルの作製と多様化内皮細胞特異的遺伝子群の網羅的同定を行う。以上4項目の検討により、内皮細胞多様化機構を明らかにする。 【結果】ES細胞由来Flk1陽性血管前駆細胞の培養条件を検討し、動脈内皮マーカーephrinB2陽性動脈内皮細胞とephrinB2陰性静脈内皮細胞を誘導することに成功した。さらに新たな動脈内皮細胞マーカーを見出し、同マーカーを用いて誘導動脈内皮細胞の純化にも成功した。また、Flk1陽性細胞からリンパ管内皮マーカーprox-1陽性リンパ管内皮の誘導および純化にも成功した。これらの分化系を用いて動静脈リンパ管内皮分化機構を解析し、サイクリックAMPシグナルが動脈内皮細胞分化に必要であること、およびnotchシグナルが動静脈リンパ管分化の振り分けに重要な役割を果たしていることを見出している(以上Yurugi-Kobayashi et al.,およびKohno et al.,投稿準備中)。現在純化細胞を用いた内皮細胞多様化過程における遺伝子プロファイル作製を行っている。 【結語】動静脈リンパ管内皮の分化誘導および純化に成功し、動静脈リンパ管分化の新たな分子機構を明らかにした。以上本年度の研究計画はほぼ完全に遂行できた。
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