研究概要 |
低分子量G蛋白質Rhoファミリーの活性制御蛋白質であるRho GDIα/β二重欠損マウスを作成し、その表現型を解析した結果、胸腺髄質内での成熟T細胞の貯留、脾臓のmarginal zone (MZ)B細胞の減少が顕著に観察さ九、末梢血中での好酸球の増加と慢性皮膚炎の合併が認められた。試験管内でのリンパ球遊送能を検討した結果、Rho GDIα/β二重欠損Tリンパ球ではSDF1,SLC,ELCに対するchemokine応答性が低下しており、一方、Rho GDIα/β二重欠損Bリンパ球ではSDF1,SLC,ELC,BLCに対するchemokine応答性が亢進していた。Rho GDI欠損がTおよびB細胞の増殖・生存に及ぼす影響は軽度であったことから、Rho GDIの主要な生理的機能はchemokine受容体からのシグナル伝達に関与しリンパ球の遊送能を制御することと考えられた。Rho GDIα/β二重欠損マウスではRhoファミリー蛋白質量の低下と残存蛋白質の活性化亢進が同時に観察され、上記の表現型の生化学的基盤であることが明らかになった。また、がん抑制遺伝子候補であるLMO7遺伝子の機能解析研究では、P170 LMO7によるMDCK細胞の増殖抑制とplanar polarity形成、P170 LMO7欠損マウスにおける肺上皮細胞の異形成と基底膜の陥入によるポリープ様病変が観察された。一方、TGFβによって発現が誘導されるsplice variant P100 #16は、MDCK細胞間接着を減弱し、β-cateninシグナル伝達系を活性化し、細胞の増殖能と運動能を高めることが明らかになった。従ってLMO7遺伝子座位から転写されるP170 LMO7およびP100 #16は、がん形質の獲得に関して相反する機能を発揮し、TGFβがその発現レベルを調節していることが示唆された。
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