大腸癌患者94例の癌、血清からDNAを抽出する。続いてそれぞれのDNAにbisulfite modificationを加え、これをテンプレートとしてp16癌抑制遺伝子プロモーター領域に対しmethylation-specific PCR (MSP)を行った。その結果、94例の癌DNAのうちmethylationの存在したものは44例であった。この44例の血清DNAについてPCRのかかる限度まで希釈を行い、同領域に対し1例あたり10検体を用いてlimiting-dilution MSP (LD-MSP)を行った。その産物をアクリルアミドゲルに電気泳動して同領域でのmethylationの有無を判定した。その結果、大腸癌患者の44例中30例(68%)の血清中よりmethylated DNAを検出した。またコントロールとした健常者の血清中、もしくは癌にmethylationを持たない50例の血清中にはmethylationは認めなかった。以前報告したように、従来のMSPを用いた血清DNAのp16 methylationの検出率が44例中13例(30%)であったことを考えると、LD-MSPを用いることにより検出率を倍以上に向上させることが可能と判った。臨床病理学的所見との比較では、同手法によりstage IもしくはDukes Aの段階から大腸癌患者血清より癌DNAを検出できることを考えると、LD-MSPが血清による癌の早期発見に有用であると考えられる。現在はさらに、新たなmethylation markerの確立、また定量PCRを用いることによるさらなる感度の改善を試みている。
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