研究概要 |
MHCクラスI抗原プロセシングにおける、PA28,hsp90,hsp70の機能を解析した。まず、PA28 hsp90,hsp70とプロテアソームがどのような関係にあるのかを構造解析を通して検討した。Hsp90,hsp70はプロテアソームと複合体を形成しうるが、その際のATP濃度がどちらのシャペロンが結合するかを決定しているらしい事実を見つけた。また、PA28はATP濃度が低いときにはフットボール型プロテアソーム或はhsp70結合型ハイブリッドプロテアソームとして存在するが、ATP濃度が高いときにはhsp90結合型ハイブリッドプロテアソームとして存在しうるらしい事を明らかにした。即ちプロテアソーム複合体の存在様式は同一細胞内であっても非常に動的である。また、リコンビナントhsp90及びPA28αによりプロテアソーム複合体を細胞ライセートからプルダウンすることに成功した。ATP存在下でHsp90によりプルダウンされるプロテアソームは26Sタイプとハイブリッドプロテアソームであり、一方、PA28αによるプロテアソームではATP非存在下ではフットボール型が主であり、ATP存在下ではハイブリッドプロテアソームが得られる。これらの複合体のSuc-LLVY-amc加水分解活性を確認後、合成ペプチドTRP2180-193(TRP2180-188がエピトープ),CSP277-294(CSP281-289がエピトープ)とインキュベーションし、ペプチドの切断実験を行った。その結果、TRP2180-188産生にはPA28が必須であり、CSP281-289の産生にはhsp90が必須であった。これは、我々が以前にin vivoの実験で明らかにしてきた現象の分子機構を説明したものと解釈できる。
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