研究概要 |
アミノ酸トランスポーターLAT1発現を「個性」として持つ腫瘍の診断および治療効果判定に用いる新しい腫瘍マーカーとしての有用性を検討することを目的とする。まず本診断システムの開発において、定量PCR法を用いてLAT1 mRNAの発現を検出することによって診断システムを確立することを試みた。まず本LAT1検出システムの開発に先駆け,胃癌及び大腸癌での悪性腫瘍組織におけるLAT1の発現について免疫学的染色法を用いて検討を行った。非癌部と癌細胞において,LAT1の染色性に明確な相違が認められ,LAT1は癌細胞に特異的に発現していることが示された。よって,血液を用いたLAT1検出法の開発は,新しい有用な癌診断システムとしての可能性を有すると考え,検出システムの開発に着手した.正常人より採血したEDTA-2K加血液に膀胱癌細胞由来の培養細胞であるT24細胞を加えて、LAT1,LAT2及び4F2hcについてTaqman定量PCRを行った.その結果本定量PCR法における測定限界は3000細胞/mLであると判断した.次にT24細胞(8×10^7cells/mL)をホモジナイズ処理後,超音波処理を行い、細胞膜タンパク質分画を調製した。本標品を抗原とし,膜タンパク中のLAT1タンパク量の測定を試みた結果、10^<-7>希釈(8細胞/mL)〜10^<-3>希釈(8×10^4細胞/mL)で相関係数0.7とほぼ直線性のある結果を得られ、本システムにおいて0.8個の癌細胞の検出が可能であると考えられた。本システムは癌診断としての利用に耐えうると考えられるが、現時点ではin vitro modelを用いた検討段階であり,実際の血液(血漿)での測定を可能にするため更なる改良が必要となると考えられた。
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