研究概要 |
骨髄異形成症候群(MDS)は造血幹細胞レベルの複数の遺伝子異常により発症する前白血病状態の一つである。MDSの発症機構を解明するため、白血病関連遺伝子であるAML1に注目し点突然変異について解析した。MDSの中で進行期の病型とMDS由来の急性骨髄性白血病(これらをMDS/AMLと定義)においては、AML1点突然変異は、被爆者を含む二次性MDSでは高頻度にラントドメインに集中するのに対して、一次性MDSでは低頻度でラントドメインとC末側に存在した。次にMDSの発症には複数の遺伝子異常が関与していると考えられている。そこでAML1遺伝子変異を認めた34例のMDS/AMLについて、既に白血病・MDS関連遺伝子として報告されている遺伝子の解析を行ったところ、レセプター・チロシンキナーゼ(RTK)-RASシグナル伝達経路にあたるN-RAS, SHP-2,NF1,FLT3のいずれかの変異を13例(38%)と高率に見出した。AML1変異を有するMDS/AMLでは-7/7q-や+8が高率で、変異のないMDS/AMLでは-5/5q-や複雑異常が多く見られることから、-7/7q-経路はAML1変異により造血幹細胞の分化が抑制され、RTK-RAS系の遺伝子の変異による細胞増殖能を獲得して発症すると考えられる。現在データをさらに集積中であり、MDS/AMLの遺伝子変異(染色体異常も含む)に基づく発症・進展の全貌が明らかにされることが、期待される。
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