研究概要 |
HPV感染を伴ったCervical Intraepithelial Neoplasia(CIN)病変は、同じ段階のものでも、組織学的には一様ではない。どの様な特徴を有するCINが高リスクHPV感染病変か、また真の腫瘍性病変の客観的病理組織学的指標を確立し、それに基づく疫学的情報の収集および患者の合理的な治療・検診スケジュールの確立を目的とする。 方法 本研究者が発見した高リスクHPVの感染のあるCINでみられるEctopic Chromosome Around Centrosome(ECAC)と、高感度のin situ hybridization(ISH)法で、HPVの組込みが、症例毎に定まった一定数のドット状の特異的な所見(Integration pattern : IP)として検出され、細胞のclonalな増生巣を示唆する所見となることを用いて検討した。 結果 1.ECACは高リスクHPV感染があるCINで認め、例えば16型では、CINI, II, IIIで36%(15/42),82%(9/11),67%(6/9)と高率に検出できる。2.病理診断で初回CINIまたはIIで経過観察し最終的に病理組織学的にCIN IIIに進行した13症例のHPV型は、16型などの高リスクHPVのみであり、CINIないしIIの段階で46%にECACを認める。HE染色でCINIの深層部の一部に濃染核を示す密な細胞増生巣に、IPを認める症例が1例存在。3.微小浸潤癌を浸潤傾向の強さで分けると、浸潤傾向の強い、いわゆるDe novo typeがあり、IPの頻度が高い。 考察 ECACやIP巣の所見が、発がんリスクを考慮した客観的病理組織学的な新たな指標となりうることを、更に長期追跡、進行症例の集積で検証することが重要である。また、低頻度だがCINを経ないか、あるいは極初期に浸潤癌に移行するDenovo typeの存在も考慮すべきである。
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