研究概要 |
本研究の目的は、インスリン産生細胞増殖因子として見出されたReg蛋白質による細胞周期調節機構を明らかにすることである。 1.インスリン産生細胞由来の培養細胞(RINm5F細胞)、Reg遺伝子ノックアウトマウスを用いた実験から、Reg蛋白質による細胞周期調節はCDKの抑制解除よりはCDKの活性化が中心であり、その機構は「Reg蛋白質→Reg蛋白質受容体→PI3キナーゼの活性化→PI3キナーゼによるATF2のリン酸化→リン酸化ATF2のサイクリンD1プロモーターへの結合→サイクリンD1の転写活性化→サイクリンD1量の増加→CDK4の活性化→細胞周期G1からSへの進行」であることが明らかになった(Takasawa et al. FEBS Lett. 580,585-591,2006)。 2.また、新規にReg蛋白質以外にインスリン産生細胞に対する増殖因子として機能する可能性を持つIGF(Insulin-like growth factor)-Iを膵臓組織特異的ノックアウトしたマウスを作製したところ、このマウスでは、代償的にReg遺伝子の発現が上昇し、その結果、Reg蛋白質-Reg受容体系を介して膵β細胞の再生増殖が起こることが明らかになった(Lu et al. Am.J.Physiol.Endocrionl.Metab.in press)。 3.またさらに、本研究で明らかにしてきたReg蛋白質による細胞周期の調節(活性化)がインスリン産生細胞のみならず、組織損傷を受けた後の心筋細胞(Kiji et al. Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.289,H277-H284,2005)や神経細胞(Namikawa et al.Biochem.Biophys.Res.Commun.322,126-134,2005)の再生においても機能していることも明らかになった。
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