研究課題
特定領域研究
神経堤細胞は脊椎動物にのみ見られる細胞集団で、神経外胚葉と表皮外胚葉の境界部に形成され、脱上皮化、移動の後にさまざまな組織の形成に関わっている。頭部神経堤は末しょう神経系や色素細胞などに加え、顎を含む頭部骨格の大部分を形成することから、脊椎動物の頭部形成に極めて大きな貢献をしている。これまでに、鳥類胚の頭部神経堤細胞の形成制御メカニズムについて解析をおこない、Notch、BMP、Wntといったシグナルがどのように頭部神経堤の形成に関与するのかについて明らかにしてきた。BMP、Wmtシグナルによる神経堤におけるSnail2遺伝子の発現制御に関しては論文として発表した(Sakai et al., 2005)。その結果をふまえ、今年度は神経堤で特異的な転写因子であるSox9とSnail2の発現がどのようにして制御されているかについて解析を進めた。研究成果今年度の解析により、(1)Snail2と同様にSox9遺伝子の発現もBMPシグナルによって誘導されること、(2)Sox9遺伝子の機能が神経堤形成に必要であること、(3)Snail2蛋白質はSox9蛋白質と結合してSnail2遺伝子の上流領域に結合し、その転写を活性化すること、(4)Sox9やSnail2の転写活性化能がcAMP依存性キナーゼ(PKA)によって活性化されること、(5)PKAによるSox9蛋白質のリン酸化が神経堤細胞の脱上皮化に必要であること、(6)PKAシグナルの活性化が神経堤の形成に必要であること等を明らかにした。また、FGFシグナルの活性についても検討をおこない、(1)FGFシグナルがBMPシグナルやSox9の強制発現による神経堤誘導を抑制することや、(2)この場合のFGFシグナルがRas/MAPキナーゼ経路とPI3キナーゼ/Akt経路の両方を使って伝達されていること等が明らかとなった。これらの研究により、神経堤が外胚葉の特定の領域にのみ誘導されるのは、これらのシグナルや転写制御因子の相互作用によるものであることがわかった。
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