研究概要 |
下等脊索動物の咽頭器官形成と進化の分子的理解をすすめるため、遺伝子情報基盤が充実しているカタユウレイボヤを用い、咽頭諸器官(内柱・鰓嚢・血球)の分子的背景の解析を行った。内柱研究においては甲状腺機能との関連性が示唆され始めているDuoxに着目し、1)Ci-DuoxがCiTPOと同様に内柱の甲状腺相同領域ゾーン7で特異的かつオーバーラップして発現すること、2)Ci-Duoxはゾーン7においてCi-Fgf8/17/18,5HT7,Ci-NK4と相補的な発現をパターンを示すこと、3)ゾーン7は少なくとも4つの分子的背景が異なる細胞群で構成されることを明らかにした。鰓嚢研究においては、鰓孔の新規形成および既存鰓孔の分断過程を分子的に理解するため、鰓孔周縁領域の細胞特性を特徴づけるマーカ遺伝子の発現を指標に、鰓孔形成過程を解析した。その結果、1)新規鰓孔形成過程において領域はB, C, Dの順に形成され分化すること、2)既存鰓孔の分断過程では分化した領域Dの一部が領域Bになり、細胞増殖・分断後に領域B-D間に領域Cが形成されることを見いだした。また、最も初期状態であると考えられる領域BではNotchリガンドであるDlkが発現しており、各領域マーカーのプロモーターをGFPやDlkにつないだコンストラクトの遺伝子導入実験を開始した。一方、他のNotchパスウェイ関連分子RBP-Jκ,Hes, HERPのWISH解析を行ったところ、鰓孔周縁で領域的発現を示す遺伝子を6個見いだした。一方、鰓嚢内の血球にも着目し、1)マイクロアレイおよび多検体WISH解析により血球で顕著に発現することが予測された213遺伝子を再WISHし、2)BPIP, CR-1,C6,STAT5B等を含む34の血球特異的遺伝子の同定、3)血球の遺伝子発現データベース(CiBlooDB)の構築・公開を行った。
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