研究課題
特定領域研究
生物進化の過程で起こったゲノム上の変化が、どのように表現形に結びつき、種の多様化や種の分化を引き起こしているのかという問題に対し、シクリッドの顎部形態の形成機構をモデルとして解析を行う。シクリッドは、その生態的特徴からそれぞれの種ごとに種特異的な外部骨格を有しているが、一方では、種の分化にかかった時間が非常に短いため、互いの遺伝的距離はほぼゼロに等しいと考えられている。このため、近縁種間の塩基配列や遺伝子発現の比較解析により、形態の多様化に関係する遺伝子を検出し、解析を行った。本年度はシクリッドゲノムのBMP4領域に関して、BACライブラリーを単離し、そのサブクローニングから、上流2kb領域の配列決定を行った。この領域に関して任意のシクリッド種内で多型を示すSNPを検出した。このSNPを指標にはプロタイプの比率を種間で比較したが、優位な差は見られなかった。現在、更に上流を読み進み、多型解析を進める予定である。また、昨年度までにDNAchipを用いた遺伝子発現量の比較解析により得られている、シクリッドの種間で発現量が大きく異なる下記の遺伝子に関する解析を進めた。次に昨年度作成したCiMP1抗血清の再精製を行い免疫染色の実験を行った。その結果、CiMP1が頭部組織においては上皮組織および基底膜に局在するという結果を得た。この結果からは、頭部側線が形成される部位にCiMP1の局在も観察された。頭部側線系は魚類において発達している硬骨性の感覚組織である。そしてこの側線系が頭部骨組織形成時において重要な役割を果たしていると考えられている。すなわち、頭部骨組織の形成に先立ち、側線系の硬骨化が始まり、それがきっかけとなって頭部骨組織の硬骨化が引き起こされるというものである。現在、シクリッドの稚魚の成長の詳細な観察を行っており、初期データでは実際に側線系の硬骨化が頭部骨組織の硬骨化よりも先立つという結果を得ている。この解析はさらに詳細におこなう必要があるが、これらのデータから頭部骨組織の硬骨化と頭部側線系の形成の関係が明らかになると期待される。
すべて 2006 2005 2004
すべて 雑誌論文 (3件)
GENE (in press)
Journal of Biology and Evolution 22
ページ: 1649-1660
Gene 343
ページ: 263-269