研究概要 |
本研究では、細胞間シグナル分子の1つである線維芽細胞増殖因子19(FGF19)に焦点をあて、眼発生システムにおける本遺伝子の役割を解明することで、器官形成および再生過程の基盤となる細胞分化制御のしくみを明らかにすることを研究目的とした。FGF19は,ニワトリ眼発生においてレンズ形成,神経網膜形成、網膜細胞分化にともなってダイナミックな発現パターンを示す。Fgf19遺伝子の機能解析を行なうために,CAGGSプロモータ発現コンストラクトをin ovo電気穿孔法によりニワトリ眼胞に発現させたが,レンズ発生分化に関与するL-maf,Prox1,delta-crystallinの発現パターンに明らかな変化は観察されなかった。そこで,FGF19のレセプターの1つであるFGFレセプター4の細胞外領域のみの発現コンストラクトを用いて,FGF19シグナルの阻害を試みたところ,L-mafの発現が誘導された。また,L-mafの過剰発現によりFgf19とProx1の発現が誘導され,Fgf8の過剰発現によりL-mafとFgf19の発現が誘導されることを見出した。従って、FGF19-FGFR4シグナルはFGF8シグナルの制御下にL-maf発現のnegative feedback機構に関与している可能性が示唆された。Fgf19の特異的機能阻害を行なうために,ニワトリ胚眼胚におけるin ovo electroporation RNA干渉法(RNAi)を試みたが,現在のところ明らかな、RNAi効果は観察されていない。Fgf19の発現する水平細胞の後期分化マーカの候補としてメラノプシンに着目し,ニワトリホモログの単離と発現パターンの解析を行なった。メラノプシンは概日リズムの光同調や瞳孔反射の光受容に関与するオプシンタンパク質であるが,孵卵10日ニワトリ胚において既に網膜,前脳,甲状腺に発現すること,網膜では,発生途上の水平細胞に発現し,神経節細胞のある集団や双極細胞にも一過性に発現することがわかった。
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