研究概要 |
臓器の左右非対称性は発生初期に決定される。鶏胚の左側性決定カスケードは以下の通りに進行する。まず、ヘンゼン結節左側に出現したShhシグナルが二次因子Caronteよって側板中胚葉に伝達され、そこで左側特異的転写遺伝子群が誘導される。最後に発生後期(器官形成期)において、その転写因子群の機能によって各臓器の左右非対称な形態形成がもたらされる。 Caronteの下流遺伝子を同定し、器官形成期における左右非対称発生機構を明らかにするために、発生関連遺伝子群の発現様式スクリーニングを行い、左右非対称に発現する3つの分泌性因子遺伝子を同定した。このうち、clone1,2はstage18で、予定膵・脾領域である背側内臓中胚葉左側で発現していた。さらにこれらは各々内臓中胚葉の内層、最外層に限局していた。stage21以降、膵領域でclone1,2の発現は持続するが、脾領域ではclone2のみが持続していた。このことから、予定膵・脾領域である背側内臓中胚葉の最外層と内層間には分泌性因子clone1,2による組織間相互作用が存在し、脾芽、膵芽の増殖・形態形成を制御している可能性が示唆された。 そこで脾・膵臓形成におけるclone1,2の機能解析として、clone1のシグナル阻害実験を行った。背側膵芽中胚葉にclone1の分泌型dominant negative receptorを強制導入したところ、背側膵における膵マーカーPdx1、内胚葉マーカーHnf3βの発現が消失した。このことは、clone1シグナルが背側膵芽中胚葉の機能維持や背側膵芽の分化・増殖に必要であることを示唆する。 現在、clone2の機能解析と、clone1,2が初期の左右軸決定因子であるCaronte, Nodal, Pitx2の下流に位置するかについて検討している。
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