研究概要 |
連星中性子星の合体の際に放射される重力波を求めるために,数値シミュレーション結果として得られるメトリックからゲージ不変量を用いて重力波の波形やエネルギーなどを求めた。具体的には,われわれの開発した3次元数値シミュレーションコードを用いて,連星中性子星の合体の様子の数値シミュレーション行い,それによって得られたデータから,Moncriefの方法による重力波の抽出を行った。その結果,中心星からの距離が異なる数点で重力波を計算したとき,距離に反比例する振幅hで,光速度で伝播する重力波を求めることができた。しかし,抽出した重力波の波形に,数値シミュレーションの前半部分で,2つの星が合体する以前に対応する時間では,hは距離の3乗に反比例し,しかも外向けに伝播しない成分が含まれていることが明らかになった。これは,重力波ではなく,背景メトリックの四重極成分によるものである。ここで用いた方法は,背景メトリックは,中心を原点とする球対称なメトリックで,重力波はそれからの摂動として取り扱っているため,背景メトリックが球対称でも,中心が原点からずれていたり,2つの星が離れたところに存在するなどのため,重力ポテンシャルに四重極成分があると,その部分を削除することができない。もちろん,その成分は,中心星から十分はなれたところで計算すれば,本当の重力波成分に比べて完全に無視できるものとなるが,数値計算で,数値境界がそれほど大きく取れないときは,この非波動成分が含まれることに注意しなければならない。特に,重力波観測のためのテンプレートを作成するためには,注意が必要であることを示した。なお,この成分を簡単に除去できることも明らかにした。
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