研究課題
特定領域研究
大型低温重力波望遠鏡のサファイア低温鏡の懸架では、懸架用のサファイアロッドを鏡の側面に沿って弾性変形させることができないため、懸架ロッドと鏡を接合によって取り付ける構造の実現可能性を検討する必要がある。低温鏡懸架システム開発のための基礎データを得る目的で、固相接合とsilicate bondingとの比較を行った。silicate bondingは常温の溶融石英鏡では既に実用化されている技術である。まず熱伝導特性を比較した。サファイアの固相接合面での熱抵抗は小さく、接合部分が含まれても基材と遜色の無い熱輸送が期待できることがこれまでにわかっている。比較に用いたsilicate bondingのサファイアサンプルでは接合を含む部分で余分な熱抵抗が観測され、基材に比べて見かけの熱伝導率は20Kから40Kの温度領域において約1/2に低下した。試料は、直径10mm長さ60mmの円柱状で、接合面は中央にある。長さ方向の一定熱流で定常状態をつくり、温度分布を4点で測定した。次に接合部の剪断強度の測定を行った。破断に至るまでの最大応力の値で比較して、固相接合サンプルで28MPa、silicate bondingサンプルでは6.5MPaの値を得た。これらはいずれも300Kでの実験値である。サンプルは直径10mm長さ30mmの円柱2本を端面で接合し、長さ60mmの円柱としている。一端を固定し、他端にトルクを加えて破断に至る最大トルクを測定し、剪断応力に換算した。固相接合の場合、接合面の約1/3の面積が接合面から剥がれ、残りはc軸と約50°の方向に沿って割れ、元の円柱の両側とも基材部が破断した。Silicate bondingの場合は接合面に沿って破断し、基材部の損傷は見られなかった。以上から、固相接合によれば鏡の重量(約29kg)を支えるのに必要な接合面積は実用的な大きさの範囲内で収まり、熱流路としての性能は問題ないことがわかる。
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Classical and Quantum Gravity 21
Int.Journal of Modern Physics A (発表予定)
19^<th> European Cosmic Ray Conference, 30 Aug.-3 Sep., Firenze (発表)
第4回TAMAシンポジウム、2005年2月16日-19日、大阪市大 (発表)