研究概要 |
分子に電子を束縛しているポテンシャルに匹敵するぐらい強く、かつ電子の運動に比べてゆっくり変動す〓時間依存外場をかけると、多数の電子が次々と分子から電離し、その結果、残留分子イオンはクーロン爆発を起こす。このような現象が高強度(〜10^<15>W/cm^2)レーザー照射および低速(<keV/amu)多価イオン衝〓において観測されている。近年、多重同時計数法等の実験技術の進歩により、分子配向の情報を含んだ解〓イオン対の電荷分布を測定できる様になった。 本研究では、ゆっくり変動する強い外場における分子の多重電離のダイナミクスを理論的に明らかにすることを目的とする。分子が受ける場の変化の時間スケールは束縛電子の運動に比べてずっと遅い。したがって、変化する場のもとでの断熱的な電子状態を基礎とする、電場電離(field ionization)モデルが理解の指針になると考えられる。このモデルは、従来、原子標的に対して開発され、ポテンシャル鞍点を1個含むものであった。本研究では、分子における多中心性の効果に注目し、複数の鞍点を含むようにモデルを拡張し、いろいろな2原子分子(N_2,Ne_2,NO,I_2)および3原子分子(CO_2,NO_2)に対してモデルを開発し、強い外場における多重電離の機構を調べた。本研究で対象とする過程は、多数の電子と核が絡む非摂動領域の動力学の問題である。そのような動力学を記述する理論の第一原理計算とは相補的なものであり、物理的抽像が明確で計算が容易なモデルを開発した。
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