研究概要 |
1992年,Wilkesによって見出された「イミダゾリウム塩系イオン性液体」(以下ILと略す)は,1)蒸気圧がほぼ0である,2)それ自身が分子内に電荷を持っているため様々な物質(特に電荷を持つ化合物)の溶解性が極めて高い,3)母核や置換基の合成が比較的容易である,4)化学的に安定で水や有機溶媒とも混じりにくいため分離,回収が容易である,などの特徴を持つ.従って,このIL中での反応では,反応終了後に有機溶媒や水で抽出するだけで生成物や副産物を除くことが原理的には可能であり,再利用可能な「次世代の環境調和型媒体」として大きな注目を集めている.我々はこのような観点から検討を行い,以下の成果を得ることが出来た. (1)ニッケル触媒による1,3-ジエンとアルデヒドとの立体選択的カップリング反応 ニッケル触媒による1,3-ジエンとアルデヒドとのカップリング反応がIL中でも立体選択的に進行し,ホスフィン系配位子を用いた場合にはE-オレフィンを持つカップリング体が,またNHC配位子を用いた場合にはZ-オレフィンを持つカップリング体が得られることを明らかにした。 (2)ロジウムカチオン錯体を用いた4-アルケナールのヒドロアシル化反応の検討 ロジウムカチオン錯体によって進行する4-アルケナールのヒドロアシル化反応が,IL中でも進行し,高収率でシクロペンタノン誘導体を与えることを見いだした.また,ロジウムカチオン錯体は,その電荷のためIL中に留まりやすく,そのままの形で触媒リサイクル型反応へと展開できることも明らかにした.
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