研究概要 |
昨年度得られたPt->Cd錯体に関してさらに研究を行った。ドナーとして[Pt(dbbp)(en)](H2dbbp=4,4'-di-t-buthylbiphenyl),Cd源としてCdX2(X=Cl,Br,I)を用いて合成を行ったところ。[Pt(thpy)2]の場合と同様に四核錯体,[{Pt(dbbp)(en)CdI}2(μ-I)2],および5核錯体,[{Pt(dbbp)(en)CdX}2(μ-OH)2{Pt(dbbp)(en)}](X=Br,I)が得られた。何れも[Pt(thpy)2]の場合と同様な構造をとっており,Pt-Cd距離も前者が2.677(1)Å,後者が2.707(1)-2.714Åとほぼ同様な距離であった。五核錯体の中央部の白金は同様に四価に酸化されていた。 また,これらの[Pt(dbbp)(en)]−Cd2+錯体は非常に強い発光を示すことが明らかになった。原料錯体である[Pt(dbbp)(en)]も比較的強い発光を示すことが知られているが,Pt->Cd錯体を形成した場合,長波長シフトしブロード化し,発光強度も数倍増強することが明らかになった。原料錯体の発光は白金上の配位子dbbpのπ-π^*励起状態からの発光と考えられているが,これらの錯体では,ピークがブロード化し振動構造が不明瞭となっていることから発光の励起状態がMLCTに変化していると考えられた。これは,Pt->Cd結合形成に付随する形でCdとdbbpの間に相互作用が起こりdbbpのπおよびπ^*軌道のエネルギーが低下したためと考えられる。
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